リウマチについて

リウマチ(リウマチ性疾患)とは

手や足の関節、筋肉が痛む病気は150以上あるといわれています。これらをまとめてリウマチと呼びます。
一般的にはリウマチという言葉は関節リウマチを意味しますが痛風、変形性関節症、五十肩、膠原病、そのほか甲状腺機能異常、糖尿病や肺癌などに伴う関節疾患なども含まれます。
また、最近社会的に認知度が高まっている線維筋痛症もリウマチのひとつです。
これらの病気がリウマチ科の対象となります。

リウマチの治療

私がリウマチ学に取り組み始めた昭和45年頃は現在に比較すると、リウマチと診断しても有効な治療法はないに等しい時代でした。

ところが、この10年間でメトトレキサートの使用法の変化や生物学的製剤の登場によって治療法が大きく変わり、早期からリウマチの進行を抑えて患者さんのQOLをかなり維持できるようになりました。
診断から治療方針までが激的に変わってきています。

高齢で発症された患者さんは痛みのため寝たきりになるリスクが非常に高いため、有効な治療を迅速に行わなければなりません。また若い方は早期に進行を抑えることでその後の就労などへの影響を最小限にとどめる必要があります。

治療にあたっては、個々の患者さんの状況に応じて三か月前後で治療効果を見直し、すばやく治療戦略を変更しなくてはなりません。

多くの患者さんは早期診断、早期治療により従来の抗リウマチ剤で進行が抑えられます。しかし、20%前後の患者さんには生物学的製剤が必要となります。当院では現在使用可能な7種類の生物学的製剤でのべ500人前後の患者さんを治療してまいりました。ところが、生物学的製剤は高額であるため必要なすべての患者さんに使用できないのも事実です。当クリニックでは個々の患者さんに合わせた適切な治療方針を決めてまいります。

詳細は、ひとくちメモをご覧ください。

リウマチの診断

検査でリウマチ因子や抗CCP抗体が陰性でレントゲン写真で骨に異常がないからリウマチでない、といわれた患者さんが来院されることがあります。十数個の関節に腫れがあり、一見してリウマチとわかる患者さんでした。関節を一度も触らずパソコンの画面を見るのみの診断だったそうです。

逆に検査異常のみでリウマチと診断され、副作用がある坑リウマチ剤を処方されている患者さんもしばしば見られます。関節痛の無いリウマチはありません。

リウマチの早期診断には、特に手指、足指の関節をはじめとした全身の関節をくまなく触診することが基本です。関節を触らずして診断はできません。極言すれば関節の所見でほとんど診断ができ、検査はその確認手段に過ぎないともいえます。

以下にリウマチの判断基準を掲載します。

リウマチの判断基準

リウマチ(リウマチ性疾患)の代表である関節リウマチの診断基準として下記の基準が1980年代からごく最近まで長い間使用されていました。一般の方にもわかる表現で書かれているので掲げます。

診断基準

次の7項目のうち4項目を満たすこと。

  • 朝のこわばりが60分以上続くこと。
  • 3領域以上の関節に腫れがあること。
  • 手の関節に脹れがあること。
  • 左右、対称であること。
  • リウマトイド因子が陽性であること。
  • レントゲン所見がリウマチに合致すること。
  • リウマトイド結節が認められること。

ただ上記の基準はすでに進行した患者さんの症状、検査を取り入れたもので、早期診断、治療開始の重要性が強く認識されるなか、2010年に下記の新たな基準が策定されています。

早期診断基準

6点以上で関節リウマチ診断確定

腫脹または圧痛のある有症関節数(診察)※1
中、大関節の1ヶ所
0
中、大関節の2~10ヶ所
1
小関節の1~3ヶ所
2
小関節の2~10ヶ所
3
最低1つの小関節を含む11ヶ所以上
5
血清反応(自己抗体)※2
リウマトイド因子、抗CCP抗体の両方が陰性
0
リウマトイド因子、抗CCP抗体のいずれかが低値陽性
2
リウマトイド因子、抗CCP抗体のいずれかが高値陽性
3
罹患期間(滑膜炎の持続)※3
6週未満
0
6週以上
1
炎症反応(急性期反応物質)※4
CRP、ESRの両方が正常
0
CRPもしくはESRのいずれかがが異常高値
1
  • ※1 小関節 MCP、PIP、1stlP、2-5MTP、手首中、大関節 肩、肘、膝、股、足首 OAとの鑑別のためDIP、1stCMC、1stMTPは除外
  • ※2 陽性基準は施設ごとの正常値を超える場合低値陽性は正常上限から正常上限の3倍まで 高値陽性は正常上限の3倍を超える場合国際基準ユニットができれば変更予定
  • ※3 評価時に腫脹または圧痛関節のうちで、患者が申告する罹患期間
  • ※4 陽性基準は施設ごとの正常値を超える場合 スコアリングには最低1つの血清反応と最低1つの炎症反応の測定が必要
院長のひとくちメモ

院長が培ってきたリウマチ学の知識と、日々感じたことを書き綴っています。